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コールセンターとコンタクトセンターの違い 〜現代の顧客対応の最前線〜

コールセンターとコンタクトセンターの違い 〜現代の顧客対応の最前線〜

コールセンターとは何か

歴史と役割

コールセンターは、1970年代から1980年代にかけて、電話の普及とともにアメリカで急速に発展した組織形態です。当初は主に大手メーカーのカスタマーサポート窓口や通販会社の注文受付部署などで導入され、日本にも1990年代から広まりました。

コールセンターの大きな役割は、一箇所にオペレーターを配置し、電話を通じて顧客からの問い合わせ・注文・苦情・要望などに集中して対応することです。これにより、顧客対応の質・効率を高めるとともに、一元管理による応対品質の均一化や、スムーズな情報伝達が可能となりました。現在では、金融、保険、IT、小売り、通信など幅広い業界で設置されています。

機能と仕組み

コールセンターには「インバウンド」と「アウトバウンド」の二系統があります。

  • インバウンド(受信型):顧客からかかってくる電話への対応。クレーム処理、商品の問い合わせ、注文受付、利用方法の説明など。
  • アウトバウンド(発信型):企業側から顧客への連絡。商品の案内や新サービスのご提案、支払い督促、マーケティングリサーチなど。

コールセンターでは、主にPBX(構内交換機)やCTI(Computer Telephony Integration/電話とコンピュータの統合システム)、IVR(自動音声応答)などのシステムを使って、業務効率化を図っています。

メリットと課題

電話対応に特化したコールセンターは、「直接話すことで相手の感情やニュアンスを把握しやすい」「複雑な内容もリアルタイムで説明できる」といった強みがあります。一方で、「時間帯により対応が集中して待たされる」「電話以外のチャネルからの問い合わせに対応できない」など、現代の多様化する顧客ニーズには限界も見られるようになりました。

コンタクトセンターとは何か

時代背景と登場

1990年代以降、電子メールやインターネットが急速に普及し、「電話だけでなく様々な手段で企業とやり取りしたい」という顧客の声が高まりました。これらのニーズに応える形で登場したのが「コンタクトセンター」です。

コンタクトセンターは、電話だけでなく、メール、チャット、SNS、Webフォーム、SMS、FAXなど複数のチャネルを通して顧客接点を実現する総合的な顧客対応拠点です。顧客は自分の都合や好みに合わせて最適な手段を選択でき、企業も多様な要望に柔軟に応えることが可能となります。

主要機能とテクノロジー

コンタクトセンターは、以下のようなテクノロジーや仕組みを持ちます。

  • マルチチャネル対応: 各チャネルごとに異なるUI・オペレーションに対応しつつ、顧客の「声」を受信。
  • オムニチャネル連携: 顧客情報ややり取り履歴などを一元管理し、どのチャネルでも一貫したサービス提供を実現。
  • CRM・CTI・WFM連携: CRM(顧客管理)、CTI、WFM(人員配置)など各種システムを統合し、より高度な応対管理と業務効率化。
  • AI・自動化の積極導入: チャットボットや自動応答AI、音声認識・解析などの最新技術を柔軟に組み合わせ、省力化や24時間対応も実現しつつある。

ブランド価値向上や業務改革への貢献

コンタクトセンターは、単なる問い合わせ窓口にとどまらず、「顧客エンゲージメント」「ロイヤリティ強化」「ブランドイメージ戦略」の最前線となっています。チャネル間の行き来が容易なため、顧客一人ひとりにきめ細やかなサービスを提供でき、それが差別化や競争優位性向上につながります。

また、オペレーターの業務負荷を分散し、在宅勤務など現代的な働き方にも積極的に適応しています。

コールセンターとコンタクトセンターの違い

コミュニケーション手段の幅

コールセンターは「通話」に特化。一方のコンタクトセンターは、「通話」「メール」「チャット」「SNS」「Web」「SMS」「ビデオ」など、時代に応じてチャネルの幅を大きく拡大しています。

たとえば、若年層は電話よりもLINEやチャットを好む傾向があるため、コンタクトセンター型であれば、顧客層・世代・緊急性に応じて最適な対応が可能です。

情報管理・サービスの一貫性

コールセンターでは応対履歴が主に「音声ログ」や「オペレーターメモ」に残る形。一方、コンタクトセンターでは、CRMシステムとの連携を通じて、電話・メール・チャットなど各種履歴が一元化されます。そのため、複数回・複数チャネルにわたる問い合わせでも、事情を説明し直す手間が減り、カスタマーエクスペリエンス(CX)の向上が期待できます。

業務効率化や自動化の度合い

コンタクトセンターではAIやRPAによる自動応答、業務フロー自動化(FAQの自動案内、チャットボットによる定型回答など)も一般的となっています。一方、コールセンターではまだ人手に頼る部分が多めであることが多いです。

導入・運用コストの違い

コールセンターは比較的システムが単純でオンプレミス型も多いですが、コンタクトセンターは多機能かつクラウド型が主流。導入費用や運用負担は増えがちですが、その分、人件費削減や顧客満足度向上といったリターンも見込めます。

コンタクトセンターが登場した背景

社会のデジタル化と顧客行動の変化

スマートフォンやSNSの普及により、生活者の情報収集・購買プロセスは格段に多様化しました。「いつでもどこでも」「都合のよい手段で」企業とつながりたいという期待が顕在化しています。

企業視点では、顧客維持と新規顧客獲得の競争が激化。CS(顧客満足度)やCX(顧客体験価値)の差が業績を大きく左右する時代になりました。1つでも悪い口コミやSNSでの炎上がブランドを毀損しかねないため、素早く一貫した対応が不可欠です。

働き方とビジネスモデルの変化

コロナ禍以降、在宅オペレーションやリモートワークにも適応できる仕組みが重要視され、クラウド型コンタクトセンターへの移行も加速。オペレーターが多様な働き方を選べるようになり、離職防止や人材獲得にも寄与しています。

実際の具体例・導入事例

EC・小売企業

大手ECサイトでは、以前は電話での問い合わせが主流でしたが、現在は「チャット」「メール」「SNS」での問い合わせが過半数を占めるようになりました。在庫の問い合わせや配送状況確認はAIチャットボットで対応し、複雑な苦情やイレギュラー対応だけオペレーターが引き継ぐ仕組みへと進化しています。

金融・保険業界

個人情報の保護が厳格化する中、各種申請や手続き、書類アップロードもオンライン化。ネットバンキングやQ&Aチャットが主流となり、電話は緊急時や複雑な要望時のサポート手段へと位置付けが変化しています。

自治体・行政

住民サービスの向上のため、チャットボットを導入し「よくある質問」に24時間対応。高齢者には従来通り電話サポート、若年層にはLINEで相談ができるなど、高度なパーソナライズド対応を実現しています。

今後の展望と課題

進化し続けるチャネルとAI

今後は音声認識による「自動電話応答(IVR)の高度化」や、顔認証・ビデオ通話を活用した本人確認、メタバース空間での仮想応対など、新たな技術も登場するでしょう。「人×AI」のハイブリッド化がさらに進み、よりクリエイティブな顧客対応が可能になります。

課題:個人情報保護とデータガバナンス

チャネルが増えるほど、情報漏洩や不正アクセスへのリスクも高まります。多層的なセキュリティ対策や、各国の法令遵守、従業員教育が今後ますます重要です。

人とITの調和

AI化や自動化が進む中でも、「最終的な顧客満足」は人によるおもてなしや現場力に大きく左右されます。テクノロジーに頼りすぎず、オペレータースキルやホスピタリティ教育も両立していくことが、今後のコンタクトセンター運営の要となります。

まとめ

コールセンターとコンタクトセンターは、顧客との結びつきを深める上で非常に重要なインフラです。電話中心のコールセンターは今も欠かせませんが、時代の流れとともに、より多様で柔軟な対応を実現したコンタクトセンターの重要性が高まっています。
顧客満足の最大化、業務効率の向上、ブランドイメージの強化、そしていかに新しい技術を活用し、現場力と組み合わせていくか――。これらを絶えず追求する中で、企業や組織の競争力も高まり続けるでしょう。

今後もコールセンター・コンタクトセンターは、企業と顧客がつながる最前線として重要な役割を担っていきます。自社に合った顧客対応のかたちを探し、より質の高いサービスを届けていくことが、これからの成長につながるのです。

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